名古屋大学減災連携研究センター 福和 伸夫氏の講義でした。
とても楽しい先生で「専門家の話を自分で判断し、自分が必要と(正しい)と思う事をやればいい。」と。
専門家は専門の分野には詳しく専門外のことには詳しくない。
だからそれぞれの専門的な話を聞き、自分がこれだと思うことを覚えていけばいい。と。
過去の経験は大災害の事実。
869年 貞観地震
国府・・・郡山→多賀城(日本三代実録)
”末の松山(浪越さじ)&沖の石(乾く間もなし)”
貞観11年5月26日、陸奥の国で大地震があった。昼のような光が流れて、光ったり陰ったりした。しばらくして、一般の人たちは大声を出し、地面に伏して起き上がることができなかった。あるものは家が倒れ圧死した。あるものは地面が割れてその中に落ち埋まって死んだ。馬や牛は驚いて走り、あるものは互に昇って足踏みした。城郭や倉庫、門・櫓・土壁・壁が崩れ落ちたり転倒したが、その数は数えきれないほど多い。
海では雷のような大きな音がして、物凄い波が来て陸に上がった。その波は河を逆上ってたちまち城下まで来た。海から数千百里の間は広々とした海となり、そのはてはわからなくなった。原や野や道はすべて青海原となった。人々は船に乗り込む間もなく、山に上ることもできなかった。溺死者は千人ほどとなった。人々の財産や稲の苗は流されてほとんど残らなかった。

家が密集している場所に被害が拡大(火事の延焼等)

昨年1年間の災害
・西之島マグマ水蒸気噴火
・口之永良部島マグマ水蒸気噴火(5月29日)
・小笠原西方沖地震(5月30日)
・箱根山噴火(6月30日)
・桜島レベル4(8月15日)
・茨城・栃木・宮城豪雨(9月10日)
・阿蘇山噴火(9月14日)
・チリの大地震(9月17日)
今年は?
100年前は第一次世界大戦中、享保の改革300年
・2月4日 全日空羽田沖墜落事故50年
・3月11日 東日本大震災5年
・4月26日 チェルノブイリ原発事故30年
・7月28日 唐山地震40年
・9月12日 安八水害40年
・10月29日 酒田大火40年
・11月3日 日本国憲法公布70年
・12月21日 昭和南海地震70年
福和先生が自宅に備えているもの
太陽電池+蓄電池+燃料電池+井戸
創電&蓄電
田舎&井戸
”寺田寅彦”天災と国防””
しかもいつも忘れられがちな重大な要項がある。それは、文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増すという事実である。中略
文明が進むに従って人間は次第に自然を征服しようとする野心を生じた。そうして、重力に逆らい、風圧水力に抗するようないろいろの造営物を作った。そうしてあっぱれ自然の暴威を封じ込めたつもりになっていると、どうかした拍子に檻おりを破った猛獣の大群のように、自然があばれ出して高楼を倒壊せしめ堤防を崩壊ほうかいさせて人命を危うくし財産を滅ぼす。その災禍を起こさせたもとの起こりは天然に反抗する人間の細工であると言っても不当ではないはずである、災害の運動エネルギーとなるべき位置エネルギーを蓄積させ、いやが上にも災害を大きくするように努力しているものはたれあろう文明人そのものなのである。
建物に加わる地震力
高層建物は変形しやすく特定の周期で揺れやすい
柔らかい堆積地盤上の特定の高層建物はある周期で揺れやすい
堆積層で特定の周期の揺れが増幅

☆建築物の耐震設計
建物が1000ガルで揺れたときには、
・建物が堅いと地盤も1000ガル(→震度7下限)
・建物が柔らかいと地盤は300ガル(震度6弱)
建物の堅さにより設計で考えている地盤震度は異なる
☆新しい建物が安全とはかぎらない
南海トラフ地震長周期地震動
(地震が起きると様々な周期を持つ揺れ(地震動)が発生します。ここでいう「周期」とは、揺れが1往復するのにかかる時間のことです。
南海トラフ地震のような規模の大きい地震が発生すると、周期の長いゆっくりとした大きな揺れ(地震動)が生じます。このような地震動のことを長周期地震動といいます。
建物には固有の揺れやすい周期(固有周期)があります。
地震波の周期と建物の固有周期が一致すると共振して、建物が大きく揺れます。
高層ビルの固有周期は低い建物の周期に比べると長いため、長周期の波と「共振」しやすく、共振すると高層ビルは長時間にわたり大きく揺れます。また、高層階の方がより大きく揺れる傾向があります。)
長周期地震動による超高層ビル最上階の揺れ幅
高さ200〜300mの建物
地域 揺れ幅
大阪(住之江) 6メートル
大阪(北区・阿倍野等)3メートル
名古屋 2メートル
東京23区 2〜3メートル
高さ100〜200m建物
地域 揺れ幅
大阪市北区、中央区 2メートル
名古屋市 3メートル
東京23区 1〜2メートル
長周期地震動による高層ビルの揺れ方
(リンク先も必ずみてね。。)
南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画の概要

地域力向上の方程式
地域力=人材力+資源力+情報
人材力=(能力×やる気)+連携力
連携力=ネットワーク
能力は0〜100、やる気は−100〜100
資源力=天然・自然の資源+歴史・文化・伝統
情報=物語力
物語力=人の感情に訴えかけ心を動かす力
やる気=地域を好きになる
午後は”災害の社会的影響(災害過程・被災者生活)
兵庫県立大学 環境人間学部 木村 玲欧氏

地震には内陸型地震(直下型地震)と海溝型地震がある
内陸型地震は内陸部にある活断層や岩盤等で発生する震源の比較的浅い地震
海溝型地震は海洋型とも言われ海溝付近のプレート内部で発生する地震の総称
☆人間行動からみた災害過程
災害発生 失見当
・
・
10h 被災地社会の成立
・
・
102h 災害ユートピア(ブルーシートの世界)
・
・
103h 現実への帰還
・
・
10⁴h 生活再建・復興へ
☆失見当(Disorientation)(〜10時間)
・災害の衝撃から強いストレスを受け、自分の身の回りで、一体何が起きているのか客観的に把握することが困難な時期
ー何が起きたかわからない(無覚知)
ーどうすればいいかわからない(心理パニック9
ー一部のプロ集団を除いて、組織的な対応ができない
ー情報がまったく入らない(情報空白期)
失見当を理解するためのポイント
・急激な環境変化による人間の生理的現象である
ー環境変化の大きさに対して「心のブレーカー」が落ちる
ー老若男女を問わずに「みんな」が陥る
・人によって、程度の深浅や時間の長短はある
失見当では怖いのは何か?
「どうしょう。どうしょう」という不安な気持ちになると、その気持ちで私たちはあわててしまう。
これが人間の判断力をうばう。すると適切な対応ができなかったり、やってはいけないことをやったりして、それを後悔する人がたくさん出てくる。
・わけもわからずわーっとなって、とんでもないことをしてしまう。
・たたふるえながらそこにいて、何も手助けすることができない。
”失見当”に負けないためには
1,失見当が起きることを理解する
「このような状態は誰でもなるが、しかし、それは一時的なものである」ことを知ることで、さらに慌てることを防ぐ
2,具体的イメージをつくる
シュミレーション、イメージトレーニングをすることで、何が起きるのかを想定する
3,行動を伴った解決策をつくる
解決策を事前に考えておくことで、実際に起きた時に応用がきく
安全行動の1.2.3
DROP(まずは低く)COVER(頭を守り)HOLDON(動かない)
新たな防災訓練(シェイクアウト)
行動のパッケージ化
1、普段は経験しない危機的場面について、「この状況の時にはこうする」という事前行動計画をつくり、訓練を通じて徹底させる。
2、普段は経験しない場面においては、「認知→判断→行動」に時間がかかるため、認知から行動に至るまでの過程をパッケージ化する
☆被災地社会の成立(10〜102h )
・災害による被害を理性的に受けとめ、被災地社会という新しい秩序に則った現実が始まったことに適応しはじめる時期
ー救急救命活動(GOLDEN 72hours)
ー安否確認行動
ー二次災害の防止活動
ー組織的活動の開始
ー「被災者社会」:非日常から新しい日常へ


誰が誰を助けるのか
1,大災害時では「地域内で自己完結」できることが目標(自己完結)
2, 昼間などは「高齢者が高齢者を助ける」必要がある(老老支援)
3,地域内の「事業所・中学校・高校との連携」を探る(地域内連携)
4,事前の実態把握、計画・協定づくり、訓練が肝要(事前計画・訓練)
防災の担い手は誰が?
自助(自分・家族)
共助(地域)
公助(行政・公共機関・公益事業体)
☆災害ユートピア(ブルーシートの世界)(102h〜103h)
ライフラインの途絶など従来の社会機能のマヒにより、一種の原始共産制社会が生まれて、通常とh異なる社会的価値観に基づく世界が成立する時期
ー避難所等での避難生活
ー後かたづけ、家屋の修理・補修
ーライフラインなどのフローシステムの復旧
ー「災害ユートピア(理想郷)」:善意と助け合いに満ちた平等主義の社会。一種の安定期
災害関連死
「災害発生後疾病により死亡した者のうち、その疾病の発生原因や疾病を著しく悪化させたことについて、災害と相当の因果関係があるとして関係市町で災害による死者とした者」
☆現実への帰還(103h〜10⁴h)
・ライフラインなどの社会フローシステムの復旧により、被災地社会が終息に向かい、人々が生活の再建に向け動き出す時期
ー「被災者」から「市民」へ、「非日常」から「日常」へ
ーすまいでの生活可能、仕事・学校の再開
ー被災者支援(見舞金、保険金、各種の減免)
☆生活再建・復興へ(10⁴h〜10⁵)
・社会システムが再構築され、もう被災者・被災地ではないと感じ、新たな社会への持続的発展を目指す時期
ー3つの再建(都市再建、経済再建、生活再建)
ー新たな社会基盤の整備
ー新しい市民社会の形成:自律と連帯
ー10年を区切りとした長期復興計画
ー「日常に戻る市民」と「取り残される被災者」
”安全・安心は自分たちで作るもの!”
災害・犯罪という非日常をいかに乗り越えるか
→「その場しのぎ」では対応できない
「普段やっていることさえ、なかなかうまくできない。ましてや普段やっていない・考えていないことなど、出来るわけがない」
→これまでの知恵・教訓を学び、自分たち(自分の組織・地域・家など)の弱いところ、組織・地域・家で起こりうる問題を知ることで、対応力・応用力を上げていく
災害・防災の心理学―教訓を未来につなぐ防災教育の最前線
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後半はワークショップをしました。
(自己紹介の仕方)
名前を覚えることで活動の効率が違う
A4の紙を半分におり、最大8もんの質問をする。
@名前(ふりがな)
A地域
B職業(普段の活動等)
C動機(参加理由・きっかけ)
D今の気持ち
Eこれからのテーマ
F好きな季節(理由)
G好きな食べ物(理由)
H印象に残っているニュース
I印象に残っている出来事
アイスブレイク
(氷を砕く 意味)
ルール
1,紙は隠さない(だしたまま)
2,演説しない(内容+一言)
ワークショップの仕方
☆個人作業+集団作業
進行役とタイムキーパーを決める
個人10分
集団意見の出しあい(30分)
付箋には1つの事柄を書く
文章で書く
内容をグルーピング
1つの模造紙に問題
1つの模造紙に対策


色々な災害時にスムーズにコミュニケーションできるように色々な方法を知っておくのは大切です。
今回もあっという間の講義でした。
あっという間といえば今日で1月も終わり。。。
この前2016年がスタートしたと思ったのにね。。
さて防災リーダー講座もあと僅か。。
防災士試験の勉強も始めないと。。(^^;;(笑)